いつも通りの日中、一人でニューヨークの地下鉄に乗りました。ここまでは、私はとても穏やかな気持ちで過ごしていたのです。
さて、車両に乗り込むと、黒人の若い男性とおばちゃんが言い争いをしています。「変な車両選んじゃったなぁ…だるぅ…」と思いつつも、どんなことでケンカしているのか興味があったので話の内容を聞いていました。
私が車両に乗り込んだ時にはすでにケンカが始まっていたので事の発端は厳密にはわからないのですが、おそらく話の内容から、男性が車内で行なったなんらかのパフォーマンスに対して、おばちゃんが気に入らないことがあり、おばちゃんの方からケンカを売ったようです。
最初は、おばちゃんが何か言うたびに男性が大声で奇声を発していたので、男性の方がヤバい人なのかと思っていましたが、話を聞いているうちに、「男性、正論しか言ってなくない？」と思い始め、そんなことを思っているうちに、男性に「もう（電車を）降りろ」と何度も言われたおばちゃんが私のすぐ横（というかおばちゃんは立っているのでほぼ真上）まで来て「MONKEY」と男性を何度も侮辱します。
同じ車両の乗客は、駅に着くとぞろぞろと電車を降りていきました（おそらくその駅で降りる人もいたし、うるさいから車両を移った人もいたと思います）。私の横には若い夫婦と2歳くらいのベビーカーに乗った子どもがいました。
私は「この子、彼らがうるさくて泣いちゃわないかな？」と不安で見ていましたが、我関せずという感じでずっとスマホを見ていました（いまの2歳児ってすごい）。
一方私は、頭の上で大声を出しているおばちゃんに呆れてしまって、正直もう「早く降りてよ…」と思って結構イライラしていました。
その後、ついにおばちゃんが降りると男性は、同じ車両の乗客に向けてトークを始めました。内容を簡潔にまとめると、「彼女は俺のことをMONKEYだと言った。スペイン人や日本人や、そういう他の国の人たちは俺のすることをリスペクトしてくれるのに、どうして黒人同士ではお互いをリスペクトできないんだよ。おかしいだろ、な？！」って話でした。
すると、白人のおじいさんがスッと男性のところへやってきて、「まあ、落ち着いて。年上の人にばばあとか言っちゃだめだよ。」と慰めてつつ諭していました。
※日本でもあるかもしれませんが、こういうケンカが起きた時にお年寄りが声をかけに来るパターンがよくあります。
男性は少し落ち着きを取り戻し、おじいさんのことを「Bro」と呼び、悲しいやら悔しいやらの気持ちを伝えていました。
※特に黒人男性に多いですが、親しみを込めて相手の男性のことを「Bro」（brotherの略）と呼びます。ちなみに私は、同じアパートメントビルに住んでいるスペイン人の学生の男の子に、「Sis」（sisterの略）と呼ばれてました。建物内のジムに行くとなぜか毎回彼がいたんですよね…最近は見かけないですが。
と、いうわけで今回は、まぁアメリカらしい日常のケンカの紹介でしたが、もしあなたがアメリカの文化に慣れていなかったり、英語が聞き取れなかったりする場合は、このようなケンカが始まったら、即電車を降りることをおすすめします。
私は今まで頻繁に地下鉄を利用しているし、日常的にいろんな人のケンカを見てきたうえで、今回のケンカは大丈夫と判断したのでそのまま同じ車両に乗っていましたが、少しでも「これはやばそう」と思ったら、迷わずその場から逃げます。正直その判断は自分の経験からしか導き出せないと思います。
彼らが銃を持っている可能性だって大いにあるし、関係ないのに巻き込まれたら最悪の事態に陥るかもしれません。
日本みたいにどこへ行っても安全ではないので、外にいる時は常に周りを警戒しながら生きています。外へいる間は神経が張り詰めているので、家に帰ってくると、どっと疲れが圧し掛かってくるときもあります。
それでも、アメリカ生活ってなぜか楽しいです。いろんな人種がいて、いろんな性格の人がいて、いろんな考え方の人が集まったこの国って、結局なんだかんだ魅力的なんです。
今回の地下鉄のケンカも、彼らがお互い強い意思を持っていたがためにどちらも折れずに不完全燃焼っていう終わり方でした。自分の言いたいことを、周りを一切気にせず言いまくるって、日本人だとなかなか出来ないですよね。それが必ずしも良いとは思いませんが、控えめな人種である私たち日本人にとっては、そんなことさえも新鮮に映ってしまうのです。
人間って、実に面白いですね！
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